書籍の紹介
著者のカトヤ・パンツァルは、フィンランドのライター・編集者・放送ジャーナリスト。
30代前半までカナダのマスコミ業界で働いていたが、ハードな仕事やジェンダー問題に直面する中で、うつ病と診断される。
病院で処方される薬が拠り所で、流行りのダイエットに挑戦したり、モノを所有することで「幸せ」を追求しようとする消費主義の渦中にいた。
北欧を代表する「男女平等」の考え方や、フィンランド特有のライフスタイルを求めてフィンランドへ移住を決意。
そこで、フィンランド人が大切にしている物事の捉え方「SISU」に出会う。
常に不安やストレスで一杯だった彼女が、「SISU」を実践することで断薬にも成功し、エネルギッシュな毎日を取り戻す。
SISUとは何か?
「ガッツ」「フィンランド魂」と表現できる。
一般的には、困難に立ち向かう勇敢さ、逆境を乗り越える力といわれる。
「SISU」は、粘り強さ・諦めない姿勢を伴うが、ただジッとして我慢するだけの根性論ではない。
前進するために人に助けを求めることや、今いる枠を飛び出して不幸な関係性から思い切って飛び出す勇気を持つことだと筆者は答えている。
筆者は章の後半「SISU」の最も大きな教訓の一つに、夫との離婚を上げた。
たとえ、どんなに辛くてもこれ以上の関係性が望めないと感じたら、それを認めて手放す。
転職や留学など、新しいことにチャレンジしたい時も同様、私たちのあらゆる局面に置き換えられるのではないだろうか。
SISUを実践する
強く健全な身体に宿るとされる「SISU」を鍛えるには、身体のメンテナンスが欠かせない。
具体的には、以下のことを日々の暮らしに取り入れているそう。
- アイススイミング
- サウナ
- 森林浴
- よく食べる
- 自転車
- DIY
真冬のバルト海で泳ぐなんて、北欧ならではだと思いました。
アイススイミングは冷たいシャワーでも代用できるようです。
寒中水泳に関しての科学的効果や注意点も本で詳しく解説しています。
運動そのものではないけれど、階段の昇り降り、部屋のお掃除、職場まで自転車で通うといった「ながら運動」も実践しやすいですね。
また、フィンランド人は中古品で代用したり、DIYをして想像力を働かせながらエコな暮らしを実践するミニマリスト的な思考を持ち合わせているようです。
フィンランドでは、必要以上にモノを買い漁る購買行動には、冷ややかな視線を注がれるのだとか。
モノの多さが豊かさと煽る消費主義とは対照的で、まさに「足るを知る」というライフスタイル。
ミニマリスト思考は、時代に左右されないフィンランドのデザインにも反映されているように感じます。
感想
「世界幸福度ランキング2018」フィンランドが156ヶ国中1位。(同ランキングで日本は54位)
世界が賞賛する教育水準の高さを誇るフィンランドですが、もともとはこのままだと国が破滅するという危機感から編み出されたシステムだそうです。
そんな逆境をバネに踏ん張ってきたフィンランドですが、日本人の心にも共感できる部分がたくさんあると思います。
同時に、私がフィンランドで生まれ育っていたらな、と羨ましくなってしまうくらい、日本との差を感じざるをえませんでした。
書籍情報
書籍名 フィンランドの幸せメソッド SISU シス
出版日 2018/09/13
著者 カトヤ・パンツァル
訳者 柳澤はるか
出版社 株式会社方丈社